記憶の汀

~大学図書館司書のとりとめのない日々のこと~

塚本邦雄『清唱千首』を読み返す

みなさま、こんにちは。

年度末はバタバタしていて何かと疲れます。

 

今夜は塚本邦雄の『清唱千首』を読み返しています。

副題には「白雉・朱鳥より安土・桃山にいたる千年の歌から選りすぐった絶唱千首」とあります。

 

私は疲れているときは短歌の歌集は読めません。(読もうという気力が湧かない)

短歌は意味を考えないといけないから。「いけないから」というか、読むと意味を考えざるを得なくなる。

現代語だからどうしても意味がついてまわって来る。

それが疲れているときには鬱陶しく感じる。

 

疲れているときは和歌のほうがいい。和歌は美しいから。ただただ美しいから。

私はさしあたり意味を考えずに、韻律の美しさを堪能しています。

 

磯の上に生ふる馬酔木を手折らめど見すべき君がありと言はなくに(大来皇女

この世にはわすれぬ春のおもかげよ朧月夜の花の光に(式子内親王

面影のかすめる月ぞ宿りける春や昔の袖のなみだに(俊成女)

 

ああ、もう何も言うことはない。最高だ。

「チューリップ喜びだけを持つてゐる」

みなさま、こんにちは。

もうじき二月もおしまい。

二月は入試シーズンなのでなんだか疲れています。

 

水耕栽培しているチューリップが咲いてくれました。

ライトピンクプリンスという品種です。

チューリップ立ち姿

チューリップ上から

なかなか凛々しい立ち姿です。花も絵画も美しいものはいいですね。

 

今回、チューリップに香りがあることを知りました。

薔薇や百合と違って、チューリップには香りの花というイメージがなかったので意外でした。

ほのかにフルーティーな香りがします。

 

農研機構のWebサイトによると、「チューリップの香気成分はモノテルペン、セスキテルペン、脂肪族化合物、および鎮静効果があるとされる3,5-ジメトキシトルエンを含む芳香族化合物である。主要香気成分の割合と生花の官能評価から、チューリップの香りは9種類に分類される。」とのことです。

そしてその9種類とは・・・

「アニス(甘さとスパイシー感のある外国のお菓子のような香り)、ウッディ(木質系の香り)、グリーン(青臭い香り)、シトラス(オレンジなど柑橘系の香り)、スパイシー(薬のようなスパイス様の香り),ハーバル(ハーブのような香り),ハーバル・ハニー(ハーブ様からハチミツ様の香りに変化),フルーティ(ベリーやリンゴなどフルーツの香り),ローズィ(バラ様香り)の9種類に分類される」とのこと。

www.naro.go.jp

 

最後に、歳時記から一句拾っておきます。

チューリップ喜びだけを持つてゐる(細見綾子)

 

それでは、また。

年明け

みなさま、こんにちは。

本年もよろしくお願いいたします。

 

私が所属している歌誌「塔」は創刊70周年を迎えます。

これを記念して特集が組まれるそうで、エッセイの公募がありました。

 

①わたしの最初に載った一首(入会して最初に「塔」に載った歌を挙げる)

②わたしが塔に入った頃

③わたしの作歌現場

 

上記のうちひとつテーマを決めて書いてね、というものです。

先ほど原稿を提出しました。

 

帰省中にもちびちびと書いていたのですが完成しませんでした。

東京に戻ってきてひとりの空間になったことで一気に筆が進みました。

私はものを書くときには「ひとり」が必要なのだと改めて実感した次第。

短歌も実家にいる時にはほとんどできない。不思議。

 

*     *     *

 

そういえば帰省中に祖母が庭の水仙を詠んだといって見せてくれました。

嬉しいね。これまで作歌経験はないそうです。

(初稿)

にわにでてかだんをながめめをやればすいせんの花

→結句の七音がないのでさしあたり「風に揺れをり」としてはどうかと伝えました。

また、「ながめ(眺める)」と「めをやれば(目を遣る)」が内容的に重複するため、片方を取り止めて別の言葉を入れるのはどうだろうと進言しました。

(改稿)

にわにでてかきねによれば足もとにスイセンの花風に揺れをり

→推敲してみたよ、と見せてくれた歌。すっきりと整っていい感じ。

歌に正解はない。「亀の甲より年の功」というか、これまで見聞きしてきたことがたくさんあるはずなので、それらを思い起こしながら、眼前の風物をうまく言葉にのせてもらえたら良いのではないかと思います。歌は万人にひらかれています。

 

*     *     *

今日はこれから篠田治美『和歌と日本語』を読みます。

和歌の世界は良いですよ。世塵を逃れるためにも…。

雲のいづこに月宿るらむ

みなさま、こんにちは。

もうじき年末ですね。

 

思うところあって百人一首を読み返しています。

高校生の頃、古典の授業で毎週百人一首の暗唱テストがありました。

当時はけっこう嫌だったんだけれど、大人になってみると無駄ではなかったと思うようになりました。

古典の先生方に感謝しています。

正月のかるた遊びもなかなか行われない現代において、和歌に接する古典の授業は貴重ですね。

 

高校の頃、なぜか教科書(古文・漢文)の音読にハマっていました。

つっかえずに読めるようになると気持ちがいいのです。

百人一首もテストが課されるので毎日音読していたのですが、当時まだ幼かった妹も何首か覚えてしまいました。(今は忘れていると思いますが…笑)

 

「夏の夜はまだ宵ながら明けぬるを雲のいづこに月宿るらむ」(清原深養父

当時の幼い妹が覚えていた歌のひとつ。意味も分からないままぶつぶつ唱えていました笑

作者の清原深養父は、『枕草子清少納言の曽祖父にあたる人物です。

 

歌意は下記ページをご参照ください。

【嵯峨嵐山文華館】小倉百人一首の全首を見る

 

そういえば…『枕草子』にも「夏は夜。月のころはさらなり」とあります。

これも古典の授業で必ず取り上げられる章段と言ってよいでしょう。

 

月といえば季節は秋だろう…という文化規範?に対して、清原家のふたりが夏の月夜を称賛しているのがなかなか面白いと思います。

 

*     *     *

 

旅行には興味がない私ですが、三重にある斎宮歴史博物館に行ってみたい。

半年ほどずっと行きたい行きたいと思っています。

 

今年の読書では、斎王や斎院に関心をもちました。

きっかけは、読み返していた『万葉集』で印象に残った大来皇女(斎王)でしたが、それよりずっと前から『源氏物語』の朝顔姫君(斎院)に惹かれていたので、私の中で斎王や斎院といった制度を深く知りたいと思うようになる素地はあったのでしょう。

www.bunka.pref.mie.lg.jp

再び読み返したい本たち

みなさま、こんばんは。

 

今日はそこそこ冷えています。

この時期になると、年末年始の帰省が早く来ないかなとそわそわしてきます。

 

実家に置いてある本をとってこようと思います。

ざっと思いつくのは…

ちくま文庫萩原朔太郎

コレクション日本歌人選シリーズ『源氏物語の和歌』

『山川登美子全集』、その他関連書籍

俳句関連の本

角川ソフィア文庫伊勢物語

田辺聖子『古典まんだら下巻』 など

 

勉強したいね、いっぱい。

短歌は難しいか?

みなさん、こんにちは。

一昨日から近所の金木犀が甘い香りを届けてくれています。

秋の深まりを感じますね。好きな時期です。

 

 

短歌に興味があるけれど、難しそうだから躊躇っている・・・私なんかに歌が詠めるだろうか?と訊かれることがあります。

私はそういう人には「短歌って簡単だよ!」と言うことにしている。

 

真面目な人ほど、まずは辞書類を買い揃えて、次いで有名な歌人の歌集を読んで、もろもろの勉強をしてからでなければ始められない、、、と考えてしまう。

 

しかし、こんなことをしていたらあっという間に寿命を迎えてしまうだろう。

 

それよりも作歌に興味を持ったならば、さっさと一首を詠んでしまうのがよい。

 

短歌のほんとうの難しさとは、自らが作歌していくなかで感じることであって、

外から眺めているだけではわからないものだろうから・・・。

 

たとえば、冒頭の金木犀を詠みたいなと思ったとします。

金木犀の甘い香りが漂ってきて嬉しいな、という内容の素直な歌をまずつくってしまう。

やはりさっさと一首にまとめてしまうのが良いでしょうね。

 

そうしていろいろな歌を(自分で)詠んで、(他者の歌を)読むうちに、作歌のコツのようなものが自分の中にたまっていきます。

そうしたら直せばいいのではないでしょうか。

はじめから完璧なんて目指さなくていい。

完璧なんて存在しないのだから。

 

金木犀」という言葉を出せば、読者にその香りを想像してもらえるから敢えて「甘い」とは言わなくていいな、、、とか

「嬉しい」とは言わずに嬉しさを表現できる何か(動詞とか)を入れたほうが一首全体がいきいきとする気がする、、、とか

 

私自身、才も経験も乏しいけれど、少しずつ前に進んでいるような気がします。

牛の歩みのようにゆっくりとですが…笑

 

俳句は多作多捨と言いますね。

短詩型文学を短歌ではなく俳句からスタートした私にとって、多作多捨の考え方はいつも頭の片隅にあります。

 

とりあえずたくさん作ってみる。すべてはそこからだ、とかね。

「足りぬものばかり数へてしまふから」

みなさん、こんばんは。

 

最近すこし涼しいですね。

デジタルデトックス、継続中です。いい感じ。

 

そういえば前にこんな歌を作っていました。

足りぬものばかり数へてしまふから SNSを閉ぢる休日(『塔』2023年5月号掲載)

 

奥野陽子式子内親王集全釈』(私家集全釈叢書)という本を買いました。

函入り。750頁超の大著。けっこう高かった。「玉の緒よ・・・」の歌で有名な歌人です。和歌も勉強したいんだよね。

 

そして突然の引用(備忘)。

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坂井 芸術としての文学、それも韻文が最後に残ると私は信じています。しかし

  (…)短歌は作ったり理解したりするのに相当年季もかかるし、根性もいるから

  そんな面倒くさいものはもういいんじゃないってなる可能性はあります。そっち

  のほうがずっと怖いかもしれませんね。

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toutankakai.com

詳細をご覧になりたい方は上記のリンクからどうぞ。