記憶の汀

~大学職員が綴るとりとめのない日々のこと~

平易なことばに溢れる詩情

皆さま、こんばんは。

こちらは先ほどから小雨です。

 

さて、昨日は品川まで出張に行って参りました。

進研アド主催の「Betweenセミナー」です。

 

テーマは、大学改革期を走りきる学生募集の中期戦略
~心を掴む情報開示で大学のブランディングを~ 
でした。

 

その詳細は別稿に譲るとして・・・

今夜は品川までの道すがら読んでいた詩集について少し書いておこうと思います。

 

お供は『吉野弘詩集』(岩波文庫・2019年)です。

 

再読だったので、気に入った詩に鉛筆で印を付しながら読み進めました。

 

140篇の詩を採録しています。

その中に、長女に向けて書かれた「奈々子に」という詩があります。

 

「お父さんが

 お前にあげたいものは

 健康と

 自分を愛する心だ。

 

 ひとが

 ひとでなくなるのは

 自分を愛することをやめるときだ。」(同書p30-p31)

 

詩の途中に出てくる一節です。

 

「ひとが/ひとでなくなる」・・・

そういう非常に辛い経験をしたことのある人の書く詩なのだと思いました。

経験の裏打ちがある言葉・・・という感じです。

 

それから・・・

多くの現代詩に見られるような抽象的で難解なものではなく、

ごくありふれた日常を出発点としているところに吉野さんの詩の特徴があると言えるかもしれません。

 

穏やかな抒情性も好きです。

 

平易なことばで詩を紡ぐということは、

必ずしも平易なことではない、そう思います。 

 

また、吉野さんを「祝婚歌」という詩でご存知の方もいらっしゃるかもしれません。

 

「二人が睦まじくいるためには

 愚かでいるほうがいい

 立派すぎないほうがいい

 立派すぎることは

 長持ちしないことだと気付いているほうがいい[後略]」(同書p183)

 

こういった言葉が生まれてくる源泉はご自身の経験からなのでしょうか。

そうだなぁと読んでいて納得している自分がいます。

 

人の心を打つ詩歌には「実感」があると改めて思うのでした。