皆さま、こんにちは。
もうじき9月になりますね。
先日、永田和宏著『歌に私は泣くだらう 妻・河野裕子 闘病の十年』(新潮文庫・2012年)を読みました。
以前単行本で読んでいたので、今回は再読になります。
裕子さんも歌人で、戦後の短歌界を牽引していった方です。
本書は裕子さんが乳癌の診断を受けてから亡くなるまでの切なくも美しい記録です。
そして、単に「美しい」と言うだけでは片づけることのできない、人生の実像があります。
「短歌って何?」と言われたら本書を提示したい・・・そう思わせる一冊です。
夫婦そろって歌人という境遇。歌でのみ伝えることのできる心の機微。
服薬と精神不安。恢復と再発。限りある命とは、引き算の時間であるということ。
記事のタイトルは裕子さんが死の前日に残された最後の一首からお借りしました。
様々な歌人が辞世の歌を残していますが、私が今までに出逢った中でもっとも心を揺さぶられた歌でした。生まれながらの歌人だと思います。
私が短歌という言語藝術に本腰を入れて取り組もうと決めたきっかけの一つに本書の存在があります。
人生と文学が分かちがたく結びついており、書きつけた歌の1つひとつが人生を彩り、そして支えているということを深く考えさせられたのです。
人は死ぬ。されど歌は残る。
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