記憶の汀

~大学図書館司書のとりとめのない日々のこと~

『知音』2021年7月号から

みなさまこんにちは。

遅ればせながら7月号を。

 

短いのに詩情が宿っている俳句ってすごい。

もちろんその思いを汲み取る読者の力量も試されているんだろうけど。

私にはまだわからないことばかりだ。

 

今回は春の季語、桜草(さくらそう)の句が多かった。

ちいさくてかわいらしい花だ。

ガーデニングと言えば、西洋の花ばかりのイメージだが、せっかく日本に住んでいて日本の気候を享受しているのであれば、日本の草花にも注目してほしいと思う。

桜草は江戸時代に武士の間でも人気が高く、盛んに品種改良がなされたと聞く。

身近な草木を愛でる―――私たち現代人が忘れ去って久しい営為のように思われる。

 

桜草明日といふ日の必ず来(永井はんな)

 

もう会へぬやさしき人ら桜草(月野木若菜)

 

主役にはなれぬ生涯桜草(津金しをり)

 

露天湯にひとり眺むる朝桜(金子笑子)

 

てふてふの言ひたきことのある如く(山田紳介)

 

用水のやがて暗渠へ花筏(佐瀬はま代)

 

ほつれ髪ほつれたるまま麗らかに(佐竹凛凛子)

 

桜草肩の触れ合ふ人とゐて(髙山蕗青)

 

許すとは認めることや春来たる(小林月子)

 

あの家も持つ人のゐて春灯(山近由起子)

 

勤勉は今なほ美徳朝桜(高橋桃衣)

 

ブラウスの襟真つ白に進級す(鈴木千穂)

 

やさしさを形にすれば桜草(森 千里)