記憶の汀

~大学図書館司書のとりとめのない日々のこと~

『鷹』2021年2月号から

みなさまこんにちは。

今日はあたたかく、洗濯物もよく乾きそうな日です。

鷹誌から忘れたくない句をメモさせていただきます。

 

アルバムとだまつて話す小春かな(遠藤篁芽)

石段の先は青空七五三(喜納とし子)

地震くればいちころの街寒月下(加藤静夫)

古書売つて二束三文文化の日(景山而遊)

星の名を同時に言つて息白し(黒澤あき緒)

髪切つて夫と落ち合ふ小春かな(佐藤栄利子)

熱燗を口がむかへに行きにけり(佐竹三佳)

小春日や一輪車追ふ三輪車(林るい子)

古本の詩集に栞銀杏散る(辻本京太郎)

冬うらら何もない町だけど好き(竹岡佐緒理)

冬薔薇無くして気づくことばかり(柳浦博美)

冬菊や心寄せねば何も得ず(折田倫子)

カーテンの裾より光年新た(阿部千保子)

木犀や階段上る楽譜店(澤村五風)

ていねいに神棚を拭き冬に入る(根岸操)

一日に思ひ巡らす柚子湯かな(佐野恵)

冬薔薇たつた二行の置き手紙(大西和子)

仰ぐとは懐かしむこと冬紅葉(大西明)

 テーブルに林檎一個の翳りかな(柄川冴子)