記憶の汀

~大学図書館司書のとりとめのない日々のこと~

「前(さき)の世に出逢ひてゐたるあかしかと思ひぬ なにか君が懐かし」(笹井宏之)

みなさんこんばんは。

春めいてきましたね。

図書案で本を返した帰り道、小学校跡に木蓮が咲いていました。

写真を撮っている人がいました。買い物の帰りだが、あまりにきれいに咲いているので写真を撮りたくなったと話してくれました。

その気持ち、よくわかる。白い花がたくさん、見事に咲いていたのですから。

その木の向こうには、紫色のつぼみがふくらんでいました。紫木蓮(しもくれん)ですね。

「たなごころひらくごとくに紫木蓮」(拙句)

 

先日読了した笹井宏之『八月のフルート奏者』でいいなと思った歌を引いてみます。

「夏草になつ暮れてゆく前奏はひかりのなかの鷺のはばたき」

>映像的。鮮やかな情景が立ち上がります。

 

「やがて音ひとつとなりて流れたり 水澄む秋の蛇口つめたし」

>下の句に俳句的な詩情を感じます。

 

「木の間より漏れくる光 祖父はさう、このやうに笑ふひとであつた」

 

「どうしてもかなしくなつてしまひます あなたをつつむあめのかをりに」

>下の句に、感覚の機微を思う。

 

「前(さき)の世に出逢ひてゐたるあかしかと思ひぬ なにか君が懐かし」

>こういう相聞歌に強く惹かれます。

 

「あすひらく花の名前を簡潔に未来と呼べばふくらむ蕾」

 

他にもあるのですがこの辺で。