記憶の汀

~大学図書館司書のとりとめのない日々のこと~

司書:児童サービス論(レポート)〔司書12〕

こんにちは!

今日は私が受講した年度の「児童サービス論」レポートについて書いていきます。

末尾の諸注意・免責事項も必ずお読みください。

 

<設題>

近年の子どもの読書離れについて述べ、図書館司書として児童サービス(ヤングアダルトを含む)をどのように取り組んでいけばよいか、また図書館は関係機関等とどのように連携・協力し、児童サービスを進めていけばよいかを述べてください。

 

<作成のポイント>

私が受講していた頃は、レポートの合格が難しいと言われていた科目です。まず、設問の構成をわかりやすいように分解して確認してみましょう。

①近年の子どもの読書離れについて述べる

②図書館司書として児童サービスをどのように取り組んでいけばよいか?

③図書館は関係機関等とどのように連携・協力し、児童サービスを進めていけばよいか?

①~③の項目にそれぞれ十分な論述をしなければ合格は難しいと思われます。テキストを丹念に読み込んで、内容を理解しましょう。そして、必要に応じて参考文献を織り交ぜながら回答を作成すればよいでしょう。作成のポイントは至ってシンプルですが、出題者の意図を汲み取り、正確に要求にこたえるように意識することが肝要です。

 

<レポート>

 本レポートでは所与の設題に沿って記述する。

 

1.近年の子どもの読書離れについて

 読書離れが社会的課題となっている。その背景には、子どもの育つ道筋の異変がある。すなわち、身の回りの自然や風景、暮らしの方法、日常生活の様式、遊び、文化、労働、家庭、地域、学校、コミュニケーション手段等、我々を取り巻くほとんどのものが戦後70年余の間に一変したのである。その歪みは、言葉の獲得や読書の基盤となる生活体験のところで「子どもの育ちそびれ」現象として現れている。そしてそれは体や心の面の未熟さとなって現れ、例えば学級崩壊や、現代の様々な事件やトラブルにも関係している可能性がある。

赤ちゃんは耳から音を聞いて反応することで、言葉を覚えていく。言葉を一定のルールで記号化したものが文字で、その連なった物が文章となる。その文章を読んでいくのが読書である。そのため、文字の獲得、習得なくして読書は成り立たない。文字の獲得のためには言葉が必要で、その言葉は日々の暮らしの中で培われる。この日々の暮らしの中に、現代では映像メディアが大きく入り込んでいる。

読書離れの原因は、以下の4つに大別される。

・個人的な要因:言葉の獲得、生活体験、TVゲーム等の遊びの変化、精神的ゆとり、習いごと、学習塾、時間のなさ、など

・家庭の要因:少子化核家族、家庭での読書環境、読んでもらう、親の読書意欲と姿勢、働く親と子どもの関係、など

・社会的要因:テレビなど映像メディアの急激な発達と映像文化の肥大、公的読書施設の不足、読書観の変化、出版・流通上の問題、文庫活動・読書運動、優れた子どもの本の書き手と作品、など

・学校教育の要因:戦後の学校教育のあり方、週休二日制の実施とゆとりの時間、読書教育、学校図書館の不備、教師など

読書離れは上記のような様々な要因によって引き起こされており、読書の効能のひとつである“言葉の獲得”の側面から考えても、読書離れは憂慮すべき事態である。

 

2.図書館司書としての児童サービスの取り組みについて

 児童サービスとは、子どもに読書の喜びを知ってもらうことを目的とする公共図書館の活動のひとつである。子どもと本を結びつけ、子どもが読書の楽しみを知り、それが子供に定着するようすすめ励ます様々な活動や工夫等を指す。児童サービスには、読書を通して子どもが他者を知り、社会の存在に気がつくという働きや公共性の理解などの社会的な意義を内包している。

児童サービスは、本を主とした直接活動と、子どもと本をつなげる間接的な活動の2種類に大別される。

 まず、直接活動とは、子どもと直接に接して、本を使って、読書につなげたり、調べたりする働きである。具体的にはフロアワーク、読み聞かせ、ストーリーテリング、ブックトーク、アニマシオン、レファレンス、読書案内、行事・文化集会活動、乳幼児サービス等があり、一定の技術や能力が必要となる。例えば、ブックトークとは、テーマを設定して複数の本を口頭で説明し、紹介した本を読んでみようと思わせる活動である。児童サービスとしてのブックトークは、対象は子どもだけではなく、子どもに読む絵本を紹介してほしい親や学校で読み聞かせする本を探しているボランティア、読書教育に取り組んでいる教師などさまである。[1]

 次に、間接的な活動とは、子どもが読書という行為につながるように条件整備や環境整備を含むいろいろな働きかけを行うことである。例えば、子どもが目的の本を自分で探せるように資料の組織化や分類をしたうえで配架を行ったり、展示・掲示やブックリストの作成等で本の紹介を行ったりする。

また、ヤングアダルトサービスとは、おおよそ13歳から18歳を対象として、読書を生活の中に定着させ、読書がもたらす効用によって各人の自立を支援するサービスである。例えば、ヤングアダルト・スペースの設営やブックトーク・読書サロン等のヤング向け活動プログラム等がある。なお、ヤングアダルトサービスの担当者を専任ではなく兼任にする場合は、成人向け資料情報への移行を促すことが多々起るため、成人資料の担当者が望ましいという考え方がある。[2]

 

3.関係機関等との連携・協力について

 公共図書館は子どもに本を手渡すために、積極的に地域の子どものいる施設と連携・協力をする。これは、子どもの読書活動を推進するだけではなく、地域の人たちに公共図書館を知ってもらう機会にもなっている。

子どもと本の出会いの場を少しでも増やすためにも、地域の施設との連携・協力が欠かせない。

 具体的な連携・協力施設として、子どもたちの通う学校がある。図書館法に規定されているように、公共図書館学校図書館と緊密な連携をとる必要があり、調べ学習の援助や資料の団体貸出、図書館および学校訪問、教員へのサポート等を行う。例えば、調べ学習の定着により、学校図書館の資料の必要性は高まっているが、地域資料などの整備が不十分の場合も多く、公共図書館がバックアップする必要がある。その際、地域資料は市販されていないものも多い点、子どもたちの理解度に合わせて書かれているものは少ない点、どこでどのような資料が作成・発行されているのかも把握しづらい点を念頭に、子どもが調べ学習をスムーズに行うことができるように配慮が必要である。[3]

また、学校以外の施設では、保育園や幼稚園、児童館、保健所、病院、文庫、学童保育、障害者施設など様々な施設があり、それぞれが図書館と連携を図る必要がある。例えば、保健所は乳幼児から、就学前の子どもは保育園・幼稚園から、必要に応じて団体貸出を行ったり、選書のための情報の提供や読み聞かせに出向いたり等の連携が考えられる。また、長く入院生活をおくる子どもに貸出サービスを行う場合や、障害を持つ子ども、読書に対して何らかの不自由さを抱える子どもにも、利用しやすいサービスを提供することも連携のひとつである。さらに、家庭への働きかけやボランティアの協力も、全ての子どもが本と出会い、読書の楽しみを味わう機会を増やすために重要な活動である。

 

<参考文献> ※出版年順

石井 桃子著『子どもの図書館』岩波書店・1989年

堀川 照代編著『児童サービス論』日本図書館協会・2009年

日本図書館協会児童青少年委員会児童図書館サービス編集委員会編『児童図書館サービス1』日本図書館協会・2011年

 

<参考箇所>

[1]日本図書館協会児童青少年委員会児童図書館サービス編集委員会編『児童図書館サービス1』(日本図書館協会・2011年)p149

[2]堀川 照代編著『児童サービス論』(日本図書館協会・2009年)p127-p128

[3]堀川 照代編著『児童サービス論』(日本図書館協会・2009年)p143

 

 

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