記憶の汀

~大学図書館司書のとりとめのない日々のこと~

司書:情報サービス論(レポート)〔司書11〕

こんにちは!

今日は私が受講した年度の「情報サービス論」レポートについて書いていきます。

末尾の諸注意・免責事項も必ずお読みください。

 

<設題>

学校図書館の利用教育の指導内容を挙げ、それぞれについて述べるとともに、

②「図書館利用教育ガイドライン-学校図書館(高等学校)」を参照(日本図書館協会ホームページの「委員会」の利用教育委員会にて全文公開。冊子は「参考書の紹介」参照)し、利用教育の手段はどうあるべきか、貴方自身の考え方を含め、論じてください。

 

<作成のポイント>

・設問が①と②の大きく2つに分かれています。テキストや参考文献を参照することで、比較的スムーズに論述できると思います。②に関しては、利用教育の手段について自分の考えを展開する必要がありますので、テキスト等を読みながら考えをあたためておきましょう。参考文献が豊富なのでさほど困ることはないと思います。

 

<解答>

 本レポートでは所与の設題に沿って記述する。

 

1.学校図書館の利用教育の指導内容について

 近年の情報化社会は情報洪水の様相を呈しており、いかに適切な情報を効率よく入手できるかが重要になっている。そこで学校図書館においても、資料を利用する際に必須となる基礎知識や技術を生徒児童に学習させる利用教育が求められている。文部科学省が1983年に刊行した「小学校・中学校における学校図書館の利用と指導」において、おおよそ次のように示されている。

 ・図書館資料の種類や構成を知ったうえで利用する。

 ・図鑑、辞典、年鑑等の利用に慣れる。

 ・資料の収集、記録、まとめ、伝達、保管のそれぞれを適切に行う。

 ・読書習慣を身につけるとともに、読書に関する集団活動にも進んで参加する。

 また、全国学図書館協議会SLA)は、学校図書館における利用指導について、「学習と情報・メディア」・「学習に役立つメディアの使い方」・「情報の活用の仕方」・「学習結果のまとめ方」の4区分とする『情報・メディアを活用する学び方の指導体系表』を2004年に公表した。

 卒業後に情報化社会へ飛び込んでいくはずの大学生が、館内資料の探し方等の基本事項を知らない者が多く、これは塾や学習参考書に依存した受験勉強しか知らず、本当の意味で「学び方」を教育できていないことに起因するという指摘【注1】もある。上述の利用者教育の重要性が痛感させられる。インターネット検索の時代だからこそ、学校図書館が中心となって「文献検索法」等を習得させなければならない。

 

2.図書館利用教育ガイドライン

1998年の『図書館利用教育ガイドライン学校図書館(高等学校)版』にて、高等学校の図書館における情報教育の指針が提示された。その教育目標は次の通りである【注2】。

領域1:印象づけ(情報ニーズを満たすために利用しようという意識を持たせる)

領域2:サービス案内(施設、設備、職員の支援を知ってもらい、利用につなげる)

領域3:情報探索法指導(情報の特性を理解させ、情報源の探し方と使い方を指導する)

領域4:情報整理法指導(メディアの特性に応じた情報の取り扱い方法を理解させる)

領域5:情報表現法指導(メディアの特性と使用方法を知るとともに、情報倫理を理解させる)

そしてその指導方法について、図書館と教科の協力の有無との観点から次の3段階が紹介されている。

 Ⓐ関連なし(図書館単独で実施可能)

 Ⓑ関連あり(図書館と教科の協力で実施)

 Ⓒ統合(図書館と教科が共通の体系的な情報教育カリキュラムを持ち、分担で指導を実施)

 なお、現状では総合的な情報教育カリキュラムは未完成で、統合の段階は到達目標であり、現在多くの学校図書館で実施されている資料を用いた調べ学習はⒷ段階である。

 

3.利用教育の手段はどうあるべきか

 先述のガイドライン(高等学校)を踏まえて、高等学校における利用者教育の手段について私見を交えながら具体例を提示する。なお、「実践から『学校図書館の教育力』を考える<アンケート集計>」を参照した【注3】。

領域1では、新学期に全生徒へ図書館利用案内の配布等を行い、学校図書館の存在をアピールする。教科授業との関連はない(Ⓐ)。

領域2では、新入生を対象に4月頃、ホームルーム等の時間を使ってクラス毎に図書館のオリエンテーションを実施する。ここで専門職員の支援を得られる場が図書館であると認識させる。こちらも教科授業との関連はない(Ⓐ)。

領域3~5では、教科授業と関連する(Ⓑ)一連のプログラムを考えた。まず領域3として、夏休み等に特定の課題を与え、学校図書館は勿論、必要に応じて近隣の博物館等の類縁機関も紹介しながら、実際に情報探索を行ってもらう。3~5人程度のグループを作ってもよいだろう。具体的な課題としては、たとえば地歴公民で地域にゆかりのある史跡の調査等である。平時は生徒・教員ともに日々の授業や部活動に追われがちであるため、長期休暇を利用することが現実的であると考えた。次に、領域4では、生徒が調査で収集した情報について整理・加工法・保存法を休暇明けの通常授業の1コマを使って、図書館職員を招いてレクチャーする。単なる講習会ではなく、自分が調査した結果の取扱方法であるため、具体的であり理解が深まると思われる。最後に、領域5であるが、調査結果の発表会を行う。こちらも図書館職員と連携して発表に用いる各種メディアの特性や使用法を指導したうえで、ポスターやスライド発表など、生徒自身に自分の最適な情報表現を決定させる。それと同時に著作権やプライバシー等の情報倫理についても併せて指導する。

以上、ガイドラインが示した情報教育の指針に基づきながら、私自身の高校生活で欠けていた情報教育を回顧しつつ具体的な利用教育の手段を考えてみた。今回、真に効果のある情報教育を行うならば、学校図書館と教科教員の友好的な関係が土台になるということを痛感した。高校生のうちに上記のような情報教育を受けていれば、大学へ進学した際にも勉強や研究への橋渡しにもなるだろう。

 

【参考文献】※出版年順

丸本郁子他『大学図書館の利用者教育』日本図書館協会(1989年)

図書館利用教育委員会『図書館利用教育ガイドライン(合冊版)』(2001年)

図書館利用教育委員会情報リテラシー教育の実践』日本図書館協会(2010年)

塩見昇『学校図書館の教育力を活かす』日本図書館協会(2016年)

 

【引用箇所の明示】

注1・・・丸本郁子他『大学図書館の利用者教育』日本図書館協会 p13

注2・・・図書館利用教育委員会『図書館利用教育ガイドライン(合冊版)』p22-p25

注3・・・塩見昇『学校図書館の教育力を活かす』日本図書館協会 p166-p173

 

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