記憶の汀

~大学図書館司書のとりとめのない日々のこと~

司書:図書館サービス概論(科目終末試験)〔司書13〕

こんにちは!

今日は私が受講した年度の「図書館サービス概論」科目終末試験について書いていきます。

末尾の諸注意・免責事項も必ずお読みください。

 

<設題>

戦後の図書館サービスの変遷について説明してください。

 

<答案>

 本稿では、戦後、図書館法制定(1950年)以降の図書館サービスの変遷について述べる。

 

1.図書館サービスの模索期(1945年-1960年)について

 1950年に図書館法が制定され、図書館の無料の原則が打ち出された。また、GHQの示唆により様々な図書館サービスが提示されたが、この時期に普及していったもののひとつに開架式と閲覧方式がある。戦前は保管を重視したため、閉架式が一般的であったのだ。また、ブックモビルが登場し、多くの資料を積載したマイクロバス型の車が図書館員とともに定期的にサービス場所を巡回した。さらに戦時中の反省から図書館の中立性が議論され、1954年に「図書館の自由に関する宣言」が採択され、「図書館の自由が侵されるとき、われわれは団結して、あくまで自由を守る」としている。図書館にとって普遍的な内容であり、様々な議論の基盤となっている。

 

2.「中小レポート」から『市民の図書館』へ(1960年代)

 1960年代は日本の公共図書館サービスの方向性が定められた時期である。日本図書館協会が1963年に調査報告書として『中小都市における公共図書館の運営』(以下、「中小レポート」)を刊行し、住民への資料提供を重視し、そのためにも身近で通える中小図書館が機能することが重要であると述べた。その後、日野市立図書館(東京都)によるブックモビルから始めた貸出増大の事例によって「中小レポート」の正しさが実証されていった。そして、日本図書館協会は日野市立図書館などの実践成果を全国的に展開すべく、1970年に『市民の図書館』を刊行した。同書は、サービスの重点目標として、①貸出、②児童サービス、③全域サービスという3点を挙げている。これら「中小レポート」と『市民の図書館』は、公共図書館サービスの方向性について、具体的に提示した点で画期的なものであり、その方向性は現在でも公共図書館の基盤をなしている。

 

3.図書館サービスの発展・拡充期(1970年代)

 先述の『市民の図書館』による3つの重点目標の達成を目指して、当時の文部省が図書館建設補助金を大幅に増額する等、公共図書館が急速に発展していった。また、この時期には視覚障害者へのサービスも本格化した。1960年代から対面朗読や録音図書の作成が公共図書館で行われるようになり、1974年には「障害者への図書館サービス」分科会が発足した。なお、図書抜き取り放置事件などの問題が発生し、改めて図書館や図書館員の在り方が議論され、1980年には「図書館員の倫理綱領」が自主的規範として日本図書館協会の定期総会で採択された。

 

4.図書館サービスの機械化の時代(1980年代)

 1970年代に続いて図書館サービスが拡充しており、貸出冊数が伸びていった。その背景には、図書館サービスの機械化・コンピュータ化の進展により省力化が進んだことがある。コンピュータ目録の導入などにより、カードを探したり記入したりする手間が省けて、簡単に資料の所在を確認したり、貸出手続きができるようになったのである。

 

5.図書館サービスのネットワーク化の時代(1990年代)

 この時期の特徴はネットワーク化の進展である。1990年代には県立図書館を中心とする県域ネットワークの形成で利便性が増していった。また、図書館の資源共有を推進するために広域利用制度が導入されたり、開館日や開館時間を拡大したりして、図書館サービスはさらに利用されるようになった。

 しかし一方で、公共図書館の資料費の減少が1990年代後半から始まっていき、職員についても臨時職員や非常勤職員の割合が増加した。また、1997年には、図書館建設補助金が廃止される等の変革があった。

 なお、1990年代中ごろからインターネットが一般にも普及していき、オンラインデータベースなど図書館外に蓄積されたデータから利用者のニーズに合う情報を検索して提供できるようになり、「情報へのアクセス」というかたちで提供できる情報が格段に増した。同時に、ホームページを作成する図書館も増え、OPACや利用案内をウェブ上に公開して利用者にとってさらに使いやすいものになっていった。

 

6.図書館サービスのハイブリッド(混成)化の時代(2000年代)

 通信技術やコンピュータ技術の発展により、図書館サービスの在り方が展開していった。図書館ホームページや電子メールの活用等により図書館サービスが、「開館時間内に図書館内で行われるもの」から「使いたいときに使いたいところで使うことができるシステム」へと拡充しつつある。さらに、「来館したりインターネット環境で図書館サイトにアクセスしたりして使うサービス」から「図書館側から発信するサービス」も多様に展開している。

 このように図書館サービスが便利になり、利用者がセルフサービスでできることが増えて、図書館員の専門性が見えにくくなってきている。従来主流であった使い方以外に多様な使い方ができるようになった点で、ハイブリッド型の図書館サービスが増えつつあると言える。これからの図書館員は、従来の閲覧・貸出・リクエストサービス等のサービスを推進しつつ、新たなサービス(たとえば、地域住民や行政・学習等に貢献するサービス等)の導入可能性も探っていく姿勢が求められている。

 

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