記憶の汀

~大学図書館司書のとりとめのない日々のこと~

司書:図書・図書館史(科目終末試験)〔司書14〕

こんにちは!

今日は私が受講した年度の「図書・図書館史」科目終末試験について書いていきます。

末尾の諸注意・免責事項も必ずお読みください。

 

<設題>

図書館の敵とは何か、思うところを述べてください。

 

<答案>

図書館の敵として、火災・震災・戦災などが挙げられる。本稿では、日本の図書館史のなかで発生した火災等による事例を述べつつ、これら図書館の敵についてどのような対策を講じていくべきかについても考察する。

 

1つ目の敵は、火災である。たとえば、平安後期の大江匡房(1041-1111)によって創設された大江文庫は、大火で灰燼に帰した。また、鎌倉幕府の初代問注所執事であった三善康信による半官半民の名越文庫があるが、1208年1月16日にこちらも火災により焼失している。さらに、江戸時代の医家であった板坂ト斎が開設した浅草文庫は江戸時代最初の公開図書館と言われていたが、1657年の明暦の大火によって焼失している。

なお、鎌倉時代北条実時によって設けられた金沢文庫は、称名寺の境内の別棟となっていた。すなわち、称名寺と文庫が谷ひとつ隔ててトンネルで結ばれており、火災の類焼を免れる目的が計算されていた。

 

2つ目の敵は、震災である。震災は、地震大国日本では避けることのできない難敵である。たとえば、紀伊徳川家に分与された本をもとにして成立した紀伊藩の南葵文庫は、1923年の関東大震災によってその全蔵書が壊滅的打撃を受けた。

 

3つ目の敵として、戦災がある。たとえば、平安後期の公卿:藤原頼長(1120-1156)は蔵書家で、私設の文庫を持っていたが、保元の乱によって焼失している。そして、応仁・文明の乱(1467-1477)では、長期にわたる戦乱によって古来伝承されてきた多くの貴重な資料を失うことになった。徳川家康がこの状況を歎き、広く内外の書籍を購求し、富士見亭文庫(のちの紅葉山文庫)が江戸城内に設けられた。また、駿河御譲り本が水戸藩主に移譲されたことにより開設された彰考館文庫は、昭和20年8月の水戸空襲により多くの資料が焼失した。

 

以上のように、火災や戦災といった図書館の敵は、図書館自身が対策を講じることで被害を最小限に抑えることができるだろう。たとえば、冷泉家文庫や陽明文庫のように、貴重書の影印本を刊行しておくことで、万が一に原本が失われた場合にも、私たちは複製によってその内容を確認することができる。また、近年では国立国会図書館が行っているように、資料をデジタルデータ化してアーカイブとして保管することも有効な対策の1つであると考える。

さらに、書架に転倒防止の設備を施すことや、これから建設する図書館を免震構造のものにする等、地震への備えも忘れないようにしたい。もちろん、図書館員ひとりひとりの火災や震災への備え(訓練・心構え)なども日々の業務の中で取り組むべき事柄である。資料の焼失・散逸を防止することは図書館の基本的な使命であり、万が一に備えて各々の知恵を絞り、有効かつ具体的な対策を講じておくべきであると考える。

 

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