記憶の汀

~大学図書館司書のとりとめのない日々のこと~

司書:図書館情報資源概論(レポート)〔司書6〕

こんにちは!

今日は私が受講した年度の「図書館情報資源概論」レポートについて書いていきます。

末尾の諸注意・免責事項も必ずお読みください。

 

設題:(1)ネットワーク情報資源とはなにか、

(2)公共図書館が提供しているネットワーク情報資源の事例や特徴を述べるとともに、

(3)今後の収集の在り方や課題についても述べなさい

 

<作成のポイント>

出題者の要求が3点明示されており、非常にわかりやすい設問です。テキストと参考文献を駆使して、(1)~(3)までの問いを満たす記述ができればよいでしょう。

 

<レポート>

1.ネットワーク情報資源とは何か

 まず、図書館に収集される情報資料とは、図書・雑誌・新聞などの印刷資料と、点字資料・映像資料などの非印刷資料に大別される。本稿で取り上げるネットワーク情報資源は、非印刷資料である。以下、その具体的な類型と特徴について述べる。

 

①有料・無料データベース

 有料のデータベースは、図書館が契約しており、ユーザーIDとパスワードを入力することで閲覧可能となる。過去の新聞記事や辞書・事典など様々なサービスがある。なお、官公庁系が提供しているデータベースは、種類こそ少ないものの無料の場合が多い。

②電子ジャーナル

 電子ジャーナルとは、従来は印刷物として出版されていた学術雑誌を電子版にしたものである。全文の閲覧および入手が可能で、リンクをたどって必要な文献を探し出すことができる利点がある。

③電子雑誌

 電子雑誌とは、オンライン上で読むことができる商業雑誌のことである。なお、先述の電子ジャーナルは含まれない。紙媒体と並行して出版される場合もあるが、両者の内容やボリュームは必ずしも同じとは限らない点に注意が必要である。

電子書籍

 電子書籍とは、デバイスを利用してデジタル化された書籍の情報を閲覧するコンテンツである。なお、音声読み上げソフトを導入することで、視覚障害者等にも活用可能な媒体となる。

デジタルアーカイブ

 デジタルアーカイブとは、原資料を所蔵している所蔵館や提供元が、有形・無形の文化的資源をデジタル化し、ネットワーク上に保存した保管庫のことである。印刷物と異なり経年劣化がないため、重要な資料を後世に残す上で大きな役割を果たしている。

 上記の他にも、音声および動画コンテンツ・青空文庫・電子黒板・デジタル教科書など、情報資源には様々な類型がある。

 

2.公共図書館が提供しているネットワーク情報資源の事例や特徴

 2009年に著作権法第31条第2項が新設されたことにより、国立国会図書館は、所蔵する資料を保存する目的でのデジタル化が可能となった。さらに2012年の法改正によって、絶版等一部資料は国立国会図書館が承認した図書館等へ自動公衆送信が可能となり、国立国会図書館デジタルコレクションで閲覧・検索することができるようになった。

 さて、ここからは具体的な公共図書館の取り組みとして、千代田区千代田図書館静岡県立中央図書館を取り上げる。

 まず、2007年11月に「千代田Web図書館」を開始した千代田図書館は、日本の公共図書館における電子書籍貸出サービスの先駆けと言われている【註1】。このサービスは、電子書籍をインターネット上で貸出・閲覧することができる非来館型サービスであり、学習系や語学学習用のオーディオブックなど約4000タイトルを提供していた。なお、2週間の貸出期間が過ぎると、パソコン上からデータが自動的に消滅する仕組みになっている。昆虫などの3D図鑑や文学作品を録音した音声コンテンツ、会計講座などの動画など、電子書籍ならではのサービスを提供している【註2】。

 次に、静岡県立中央図書館の「デジタルライブラリー」を取り上げる。この取り組みは、同館で所蔵する貴重書(江戸幕府旧蔵資料「葵文庫」、地域貴重書、浮世絵など)について、書誌データを作成し、画像とともにデジタルライブラリーとして公開する試みである。インターネットに接続できる環境があれば、時間と場所を選ぶことなく閲覧が可能である。なお、「葵文庫」の全点2, 700冊は画像からPDFファイルを作成し、ダウンロードすることもできる。貴重書の原本は、調査・研究目的で事前の申し込みをした場合のみ閲覧可能であったが、デジタル化によって非研究者にも貴重な文化遺産を目にする機会を広く提供することが可能となった。【註3】

 

3.今後の収集の在り方や課題

 今後のネットワーク情報資源の収集で筆者が課題と考えた点について述べる。

 まず、電子書籍に関して、図書館は出版社と利用者の仲介的な役割を担うに過ぎず、電子書籍そのものを所有するわけではないため、契約の打ち切りと同時にすべて閲覧不可となってしまう可能性が高い。そして、多額の税金を投入して整備していた電子書籍について結果的としてモノ(有形出版物)が図書館に何も残らない事態が生じる危惧もある。このような電子書籍ならではの課題について、図書館がどのような見解で対処するのかが大きな課題のひとつと考える。

 また、ネットワーク情報資源は、来館せずに利用者が資料を利用できる点がメリットのひとつであるが、それは図書館への来館者の減少に繋がりやすいことも意味する。来館者と図書館員の互いの顔が見えづらくなる中で、利用者ニーズの把握の困難化が想定され、どのような方策が有効か模索する必要がある。さらには、自身の手元の端末で貸出から返却まで完了する非来館型のサービスについて、有形出版物を前提とした従来の貸出・返却という概念そのものが変わりつつある時期にあると考える。(再定義の必要に迫られるだろう)

このほかにもいまだ顕在化していない課題も含め、これからの図書館員がなすべきことは多いと考える。

 

<参考文献等>

【註1】細野公男/長塚隆共著『デジタル環境と図書館の未来』中外アソシエーツ・2016年

161頁

【註2】千代田Web図書館について(文部科学省ホームページ)URL 最終アクセス日:20○○年○○月○○日

【註3】デジタルライブラリーへの貴重書の登録・公開(文部科学省ホームページ)URL 最終アクセス日:20○○年○○月○○日

 

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